【映画感想】「西部戦線異状なし」感想
戦争映画「西部戦線異状なし」(1930年版)が メチャクチャ出来が良くて最高という話。 5点語る。主に演出面について。ネタバレあり。
①そもそもクラシック映画が好き
「西部戦線異状なし」は95年前(!)の映画。
だって評価の低い作品は淘汰されているから。基本的に本当に面白いものしか残っていない。玉石混合の「玉」がゴロゴロだから。
新しい映画も勿論好きだし見るが、玉石混合の「石」に当たるかもしれないギャンブル性がある。
そのギャンブル性含めて楽しくて好きだが。
②あらすじ
第一次世界大戦中のドイツ。主人公の学生は戦争の熱気に浮かされ戦場に出る。
「祖国を守るぞ!」と理想にとりつかれていたが、地名も分からぬ戦場に放り出され、理想が一つ一つ打ち砕かれていく内、彼の考え方は大きく変わっていく。
③すごい所=演出が端的で鮮やか
ほぼ全てのシーンの演出が鮮やかですごい。これが心にすごく残った。 独自性と外連味があり、見せたいものを引き立てたシーンになっていた。100年近く生き残るのも納得だった。全てのシーンについて語りたいが、3シーンに絞る。
■「出兵パレード」■
冒頭。「戦争の理想と熱気に浮かれる街と人の雰囲気」を端的に描いている。
出兵パレードでにぎわう街や花を撒く婦人たち。郵便屋のオヤジも「明日から軍曹です!」と楽しそうにお喋り。そしてカメラはパレードを追って学校の教室の窓へ入り、静かに座る主人公たちを映す。 主人公たちは先生の戦争演説の熱気に飲み込まれ、シーンの最後には出兵を決意する。教室はお祭り状態になり学生みんな騒ぎ浮かれながら外へ飛び出す。
ここの、「街の出兵パレードの賑やかさ」と「教室内の、出兵を決意した学生たちのお祭り騒ぎ」、二つの熱気が絡み重なり見事なシーンだと思った。
↓花屋のおかみと、パレードを見る人々。

■「ブーツと死」■
「主人公と共に出兵した友人が次々死んでいく」をダイジェストに表現した演出力極まってる屈指のシーン。
高級なブーツを戦場に履いてきた、主人公の友人フランツ。戦場で大けがをし戦地病院で入院中。
他の友人が高級ブーツを欲しがる。フランツは「大事なブーツだ!絶対渡さない!」と勿論拒否。
しかししばらく後、暗い顔をした主人公がブーツを抱え病院を出てくる。そしてブーツを欲しがっていた友人はそれを手に入れる。
カメラは戦場を闊歩する兵達の足元を映す。主役は高級ブーツを履いた足元。しかし銃撃を受け、ブーツを履いた足元は倒れる。次のシーン。またしても兵達の足元を映すカメラ。先ほどとは違う兵が高級ブーツを履いている足元。そしてカメラはまたしても倒れる足元を映す。 次のシーンでは、同期仲間が全員死んでいなくなり、一人になった主人公を映す。
すご…。「間接的に示唆する」のお手本みたいなシーン。直接その場面(撃たれて死ぬ、入院中に死ぬシーン)を見せられるより、視聴者巻き込み力がすごい。アイテムの使い方うまっ。
↓ブーツの足元のショット。

■「ポスターと鏡」■
このシーンは演出というか、構図がすごい良かった。
登場人物は、鏡に映った主人公と友人、鏡の隣に貼ってあるカップルのポスター。主人公と友人がポスターに向かって喋るシーン。
普通だったらポスターと主人公で対面の構図になるところだが、鏡を使って同フレーム内に隣り合わせている。この手があったか!このシーンはこの構図ワンショットだが十分見ごたえあるほど構図力高い。いつか真似させてもらいたい。
ただの会話シーンだが、「ポスターの女に横恋慕して、ポスターの男の部分を破く」というシチュエーションもひねりが効いていて面白かった。
↓右側=鏡に映った主人公と友人。左側=カップルのポスター。

④すごい所=筋書がシンプルで力強くメッセージ性が強い
話の筋はシンプル。「戦争の熱に浮かされた主人公が、戦場へ出て現実を知り変わっていく」だけ。
シンプルで一本筋だから余計な説明を入れなくていい。 だからその分、美術/小道具/演出/シチュエーション/演技などの密度と数があり、全シーンが深く味わえるものになっている。
⑤終わりに
現代から見たら少しテンポ感が緩いかもしれないが、鮮やかで強い作品だった。
特に印象に残ったのは、 自分が刺殺した敵兵の死体にずっと許しを乞うシーン。新米兵の心理描写として凄すぎる。 観て損の無い一本。