【漫画感想】「寄生獣」漫画の究極到達点
■初めに■
漫画「寄生獣」を全巻読んだ。
私は数十年生きてきて100作品以上は漫画を読んだ。そしていま、「寄生獣」が「一番面白い漫画」に決定した。
「寄生獣」以前以後で漫画の価値観が変わった。キリスト誕生以前以後(B.C.、A.D.)みたいな感じ。もはや読まなきゃよかったとも思う。これから読む漫画全ての比較対象が寄生獣になってしまう。無理だ…怖い…いやだそんなの…いや…。
この記事は本作を読んで「面白い作品って何だろう?」と素人が色々考えたメモ。乱文。
※以下「寄生獣」のがっつりネタバレあり。全10巻でまとめ読みしやすいので是非!
■目次■
①「完成度」って何?
②作品としての強さー「テーマ性」
③作品としての強さー「普遍性」
④作品としての強さー「シンプルさ」
⑤閑話
■本編■
①「完成度」って何?
・なぜ寄生獣が私史上一番面白い漫画になったのか?それは「完成度」が100だったから。作中全ての要素が物語にフィットしていて、減点要素が一つもなくてひっくり返った。
・「完成度が高い!低い!」とよく言ってきたが、そもそも完成度って何?考えてみた。
完成度とは何か?→完成度0(つまらない…)~完成度100(究極の完成!)のレンジで示される作品の満足度の事。
・「究極の完成!」って何?→私の「理想」が全て満たされた状態→具体的にどういう状態の事?→作品を読み「物語に人生を変えられた」体験をする事。
「物語に人生を変えられた」というのは具体的にどういう事?→「作家の哲学、作家の世界の見方、その作家なりのものの考え方」が自分の中に残り続ける事。自分の世界が拡張する事。
・完成度100(究極の完成!)の作品を作るために何が必要か?→「作品としての強さ」では無いか?→「作品としての強さ」って具体的に何?→ ①「テーマ性」②「普遍性」③「シンプルさ」の3つでは無いか?
以下、①~③について色々考えてみたメモ。
②作品としての強さー「テーマ性」
●テーマとは?
→そもそもテーマって何…?今の所辿り着いた結論は「作家の哲学/世界の見方/物事の解釈の仕方の提示」では無いか?すぐ四方八方に広がろうとするストーリーを一つに束ね軸を作る役割。
→寄生獣のテーマ(私解釈)=「「寄生獣」を化物/脅威というが、人間こそが地球という星に寄生して地球の肉体(海、植物、生物、自然)を食い荒らす獣…「寄生獣」ではないのか?」。このテーマをミギーというキャラクターの行動、ラスボスを倒す時の方法(毒の棒)、冒頭2ー3pのテーマの問いかけ等のエピソードで表現している。
●作家独自のエンタメ性
→「エンタメ性」部分(現代日本に突如現れた人に寄生し人を食う生き物)が「テーマ」をそのまま表している。「寄生獣が人間の脳を食い乗っ取り生き延びる」=「人間が地球に寄生し資源を食い生き延びる」のメタファー。作者先生の「人間てそもそも寄生生物じゃないか?」という新しい世界の見方の提示。
物語最後の方、今まで読者は「寄生獣」って恐ろしくて嫌な存在!と思って読んできたが、実は人間こそが寄生獣じゃないか?寄生獣と人間の間にどれ程乖離がある?どちらも寄生して生き延びる生物だろ。と突き付けられる。敵側に感じてた嫌悪感が一気に自分の側に降ってきた。上手すぎ。私は「確かに」と納得して物凄く居心地が悪くなった。価値観の反転が起こり心が動いた。
→そもそも「寄生生物」という発想が上手すぎる。魔物vs勇者のような「人間と完全に別個体の敵」じゃない所に妙味がある。寄生獣は人の脳に寄生し人より強く人を食う化物だが、人間の胴体部分が無いと生きられない。ある意味弱い生き物だ。しかも寄生獣陣営も1枚岩じゃない。それぞれに特性と個性がある。人間と完全別個体の敵じゃないから、寄生獣と人間の間のグラデーションを表現でき、「人間」とは何かを問いかける事ができる。複雑で層の深い物語になっている。
→ストーリー、キャラ、エンタメ要素、ドラマ、舞台設定全てがテーマと噛み合っている。噛み合ってると何がいいのか?何本も糸をより合わせて強力な糸を作るのと同じで、テーマが強くなる。それだけ読者の心に与える印象の力が強くなる。結果としてずっと心に残る作品になる。つまり「究極の完成!」となる。
●テーマを読者に届ける方法
→人間と人間じゃないものの境界線は何か?生命はどこから来て何のために生きるのか?というテーマも問いかけている。
上記の問いかけは人間陣営ー寄生獣陣営でそれぞれ異質な存在であるシンイチと田村玲子が体現している。社会一般ー異質な存在の対比でテーマを際立たせている。シンイチは瀕死状態をミギーに助けられ、右腕だけじゃなく体のほとんどの部分に寄生生物細胞が入ってしまった。人間でありたいのに、より寄生獣に近い存在になってしまい苦悩する。一方田村は合理的で情を持たない寄生生物だが、好奇心旺盛で「我々は何故存在するのか」を常に疑問に思う。そして子供を産んでから不思議に人間の「情」のようなものを獲得していく。
②作品としての強さー「普遍性」
●世界中の老若男女が読んで「分かる」キャラの感情や行動
→作中でどんなに現実離れしたイベントが起こっても、それに対応する主人公の感情や行動は「普通の人間」。つまり「あー、私も同じ状況だったらそう感じてそう行動するなあ」と納得できる。(例:第一話。突然寄生獣がシンイチの右腕に潜り込んだ時のシンイチの反応、その後右腕が勝手に動き不良10人を倒す。シンイチは右腕が”違う生物になった”と気づき包丁で刺そうとする。「包丁で刺す」シーンまで、日常→非日常のエピソードと感情の積み重ねが丁寧で「包丁を右手に刺す」というトンデモイベントに納得できる。)
「んん?そのイベント起きた時主人公はそう思って、そう行動するか?」と納得できない所が無かった。
→人間の潜在的な願望や恐怖を扱っているから共感できる。「ある日突然人間離れしたパワーをゲットしたら最強で最高じゃん!」「ある日突然体の一部が消え代わりに言葉をしゃべる謎の生物に寄生されてしまう恐怖」「ある日突然人を食う化物が世界に出現した恐怖」「昨日まで家族/友人だった人間が次の日に全く別の生命体に変化している恐怖」。これらの感情は共感を産み、より物語に没入できる。上手すぎる。どうしてこんな上手い設定思いつくんだろう?
●不快な表現が無い
→少年/青年漫画の過去の名作…かなりの確率で女性への性加害的表現があって萎えていた。しかし本作にはそれが全く無い。性描写はあるが「物語上必要なものでさらっと」描かれているので気にならなかった。マイナス要素が無い(少ない)と、途中で脱落する人の数が少ない。多くの人が最後まで読める。
③作品としての強さー「シンプルさ」
●1点突破研ぎ澄まされたネタ
→この作品で心から感動したのは「徹底的に贅肉がそぎ落とされている」事だ。余計な要素や設定が省かれ語りたい事が極限まで1点に絞られている。それ1点で漫画が成立するレベルまで研ぎ澄まされたネタだ。
→研ぎ澄まされたネタ=「現代日本で謎の寄生獣に寄生されてしまった普通の少年。寄生獣たちとの闘いに巻き込まれ変質していく」。だからこの要素以外の、主人公の学校生活、部活、主人公のバックボーン、ヒロインとの恋模様、寄生獣はどこから来たのか?という謎、寄生獣は日本以外の国ではどうしているか?などの要素は出てこないか控えめに設置されている。
●贅肉を削ったから
→贅肉を全て削ったから、余計な情報や設定を説明しなくていい。だから使えるコマ数がたっぷりある。だから情報を詰め込まずに物語やキャラの心情の丁寧な描写に大ゴマを使えたりエピソードを重ねられる。だからストーリー、キャラの心情に没入しやすく分かりやすい。だから面白い!
→これの正反対が「要素や設定が多すぎて関連性が無くバラバラで、何を楽しんでいいか分からない散漫な作品」かなと思う。私だ…。自分でこの文章書いてて辛すぎる。色々バラバラな好き要素詰め込みたくてそういうの書きがち…。読者は設定集を読みたいのではなく、面白いドラマを読みたいのだ。
⑤閑話
●コンテンツってそもそも何?
→コンテンツはそもそも人間を楽しませるために存在している。「コンテンツ」ってそもそも何?→「私はOOがXXだと面白いと思う」「もしもOOがXXだったら…私はこうなると思う」「OOな人とXXな人が出会ったら面白いよね?」という他人の脳内妄想が形になったもののこと。→何で「コンテンツ」って面白いと感じるの?→「他人の脳みそ」という絶対解明不可能な宇宙の片りんに触れられるから。宇宙に触れると自分の世界が拡張する。
●漫画「裏バイト」
→私に新しい視点をくれた神漫画。私がコンテンツに深く感動する時=「「作家の哲学」が自分の中に新しい視点として残る/深く共感する時だ!」と気づいたのがこの作品のおかげ。10巻の「スーパーマーケット店員」がそれ。また別で記事書きたいくらい響いた。
以上。
寄生獣、前知識ほぼゼロ状態で読めて本当に幸せだった。「名作って言われてるし買ってみるか~」で何となく購入して人生変わった。この感動が忘れられない。
寄生獣みたいな神作品にまた出会いたい。これからも幅広く色々な漫画読んでいく!!